今回は、昭和19年(1944年)に発行された日本銀行券10銭 八紘一宇(はっこういちう)の価値と見分けについてご紹介を致します。
この「八紘一宇(はっこういちう)」ってあまり聞きなれない難しい言葉ですが、「天下を一つの家のようにすること」、「全世界を一つの家にすること」という意味があります。
この言葉の起源は、日本書紀 巻第三の神武紀にあり、神武天皇が大和(現在の奈良)の橿原(かしはら)に都を定めた際の神勅(しんちょく) が起源となっています。ちなみに、神勅(しんちょく)とは神からの命令です。
それがこれ! 「兼六合以開都、掩八紘而為宇、不亦可乎」
現在の言葉に訳すと、「六合(くにのうち)を兼ねてもって都を開き、八紘(あめのした)をおおいて宇(いえ)と為(せ)んこと、またよからず」となります。
この六合とは、「天下、世界」を意味し、八紘とは、8つの方位から「全世界」、宇とは「家」をあらわします。
1903年、仏教運動家の田中智学(たなか ちがく)がこの言葉を「全世界を一軒の家のような状態にする」と解釈し、日本的な世界統一の原理として 1903年に「八紘一宇」という事を造語しました。
その意味が込められた八紘一字塔が紙幣の左端に描かれていますので見分け方は簡単ですよね(^^♪
この八紘一字塔は、実際に昭和15年(1940年)に宮崎県宮崎市の平和台公園に建てられたもので、それを十銭紙幣に印刷しております。その後、昭和32年(1957年)に八紘一字塔は、「平和の塔」に改名されました。
本紙幣の発行当時は太平洋戦争の最中であった為、急を要することから大蔵大臣の告示のみで対応可能な日本銀行券として発行されました。
この紙幣の彫刻から製版・印刷・検査・仕上げといった各工程は民間企業の凸版印刷(現 凸版印刷株式会社)に全て委託されました。
紙幣の裏面はたいへん簡素な作りになっており、また、通し番号はなく組番号(記号)のみの表記など粗悪な作りになっているのも日本銀行券10銭 八紘一宇の特徴です。
大きさは、51ミリ x 106ミリです。
気になる価格ですが、未使用品でも600円、並なら100円と希少価値が低い為残念ながら高額になることはありません。
ただし、紙幣の状態が良く、印刷ミスや耳付きと言って裁断ミスがあると希少価値が高くなり思わぬ高値になることもあります。
※日本貨幣商協同組合発行「日本貨幣カタログ」より価格を掲載しております。
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